孫という名の…

 孫が手紙をくれた。このあいだ産まれたばかりだと思っていたのに、もう手紙を送るほどの社会性を身につけたのか。昔「なんでこんなに可愛いのかよ 孫という名の宝物」という歌が流行ったが、今はその心境がよくわかる。孫はかわいい。孫ができた周りの人たちが口々に「孫は最高」と言っていたが、完全に同意だ。孫は最高。

 さて、孫がくれた手紙には「これからも元気でいてね」的なメッセージが書いてあり、その下にはおじいちゃんの絵とおそらく自画像が描いてあった。とっても上手。もしかして、将来イラストレーターや漫画家になれるんじゃないか?

 おじいちゃんの頭はハゲて、サイドに白髪を残している。眉毛も白く、細い目とともに垂れ下がっている。口の周りと目尻にはシワ、服装は緑のカーディガンだ。孫と並んでニコニコ笑っている。

 ちょっと待って、これ誰?

 何度も確認したが、この手紙は確かに私宛だ。そして、この手紙にはおじいちゃんと孫の絵が描いてあるが、私はこんなテンプレおじいちゃんみたいな外見はしていない。

 まだギリギリ50代だし、髪だって残ってるし、黒い。自分で言うのもなんだけど、目はパッチリしている。緑のカーディガンなど持っていない。誰なんだコイツは!

 そんな私の葛藤をよそに、孫から電話がかかってきた。「おじいちゃん、お手紙とどいた?」「うん、届いたよ。絵とっても上手だね」孫のかわいさに流されて、つい絵を褒めてしまった。

 私は、孫の絵を肯定するために、髪を剃り落とし、脱色し、目尻をさげるように矯正テープを貼るのであった。だって、孫はかわいいから。

(私は、孫におじいちゃんが2人いるという単純な事実を忘れていましたし、子どもが宛先を間違えてしまっただけだったと発覚した時にはもう、似たような外見のおじいちゃんが2人できあがってましたとさ)