超能力クラブ

「どうやら目覚めちゃったみたいだ……」
「どうしたの?」
「ついに目覚めちゃったんだよ! 超能力に!」
「それはすごい! ところで昨日うちのネコが子どもを産んだんだけど……」
「流すなよー」
「もう。わかったよ。何があったの?」
「実は俺にはお気に入りのペンがあるんだけど、昨日そのペンのインクが切れたんだ。そこで新しく同じペンを買ったんだけど、机の上に置いていたらどっちが新品だかわからなくなっちゃったんだ」
「うんうん。それで?」
「それで両方のペンを手に取った時に、ビビッっと来たんだよ! こっちが新品のペンだ!ってね。そして実際その通りだった。どう?どうどう?これって無機物のエネルギーを感知する能力だよね」
「わかりにくいし地味だね。それにそれって、インク分の重さの違いとかを感じ取っただけじゃないの?」
「あー、お前はリアリストだな。夢がないよ」
「ご、ごめん」
「じゃあこれは? シャンプーを流した後に目を開けなくても、シャンプーと間違えずにリンスをプッシュできるよ! これって透視能力じゃない?」
「それは、その時点でシャンプーを一度使ってるんだから、消去法でもう片方がリンスってなんとなくわかるじゃん。それにいつも同じ場所に置いてあるんでしょ? 習慣じゃん」
「お前はレイシストだな」
「何それ?」
「意味は知らない。霊能力者みたいな感じじゃないの?」
「キミは本当に超能力に憧れてるんだね」
「まぁな。だってカッコいいだろ? 『ハァッ』って力を込めるだけで念動力が使えたりしたらさ」
「あれ? 今キミが『ハァッ』って言った時、なんか風が吹かなかった?」
「え!? ホントに? ハァッ!」
「ほら! すごい! 本物の超能力だ!」
「やったー!」

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どうやら目が覚めちゃったみたいだ……


俺は寝ころんだままさっきまで見ていた夢を思い出した。


幸せな時間だった。


夢だったけど、願いが叶ったんだから良しとしよう。


友人との他愛のない会話。


数ヶ月前に超能力に目覚めた俺は、自身の能力をコントロールできずに暴走し、結果として人類を滅ぼしてしまったのだった。