さよならハデス

 純粋無垢な子どもだったころは、火星は炎が噴き上がる星だと思っていた。金星は黄金でできていたし、木星は緑豊かな星だった。水星は水で覆われていて、彗星と区別がついていなかった。

 大人になるにつれて、正しい(とされる)知識が身について、そうじゃないことがわかった。火星がなんで火星って名前なのかはいまだにわからないけど、惑星の名前を耳にするたびに、今でも頭の片隅に子どもの頃のイメージがチラつく。

 ちょっと前に冥王星が惑星から外れると話題になった。わたしの頭の中では、冥王ハデスがギッチギチに詰め込まれた星がだんだん太陽から離れていくイメージが再生されていた。どのハデスも叱られた子どものような顔をしていた。