我は、いきなりステーキ。

 我は、真の「いきなりステーキ」なり。本当にいきなりステーキを提供する。コンビニで缶コーヒーを買ったとき、「Suicaで」と言いながら、店員にステーキを提供する。満員電車で思いかけず、至近距離で向き合う形になったままお互い動けなくなって気まずい空気が流れた時にステーキを提供する。ミラーレスカメラで夕焼けを撮って、それに「#ファインダー越しの私の世界」とつけてインスタグラムに投稿している女子にステーキを提供する。
 「いきなりステーキ」を名乗ってはいるが、所詮は店を訪れた客に注文を受けてからステーキを提供する店と我を比べたら、どちらがより「いきなりステーキ」かは一目瞭然。我は、「いきなりステーキ」の名をかけて全面戦争をしかける。


 そう決意して帰ると、家があったはずの場所に「いきなりステーキ武蔵境店」の文字が……