熊五郎の乱。俺の乱。

 日本人の実に98%が「俺の先祖は織田信長の部下だったんだぜ!」みたいな会話をしたことがあるらしい(諸説あり)。私も小学生の時にそういう話になって、周りのクラスメイトたちに先祖の華々しい話を聞かされた。当然、自分の先祖が気になって祖母に尋ねてみたら「そんなんしらん!」と妙に語気荒く言われ、それ以上深くは追及できなかった。

 最近ふとそんなことを思い出して、自分の先祖を調べてみた。家系図をたどると、私の先祖は「熊五郎の乱」の指導者、熊五郎だった。江戸時代、藩の過酷な取り立てに反逆した人物らしい(諸説あり)。熊五郎が起こしたこの一揆は、小規模ですぐに鎮圧され、その後にもあまり影響を与えなかったため、歴史に埋もれてしまっている。

 「島原の乱」の天草四郎なんかと比べると、カリスマ性が足りなかったのだろうか。かわいそうな熊五郎。きっと、祖母もこの熊五郎の微妙さゆえに、聞いた私ががっかりすることを心配して、あえて教えなかったのだろう(諸説あり)。

 でも、私は自分の先祖が熊五郎であることを知って、むしろ誇りに思った。熊五郎の遺志は、私が継ぐ!

 私は政府の過酷な取り立て(所得税)に反逆するため、旗を背負い竹やりを手に同志を集った。しかし、熊五郎譲りのカリスマ性のなさが災いし、仲間が集まる前に国家権力(警察)に捕まってしまった。

 身元引受人として来てくれた母が「こういうことになるから、おばあちゃんはあんたに熊五郎の話をせんかったんたい(諸説あり)」と言った。