グローバル・バーバル

 うちの会社には海外事業部があるので、部署異動の際に海外転勤の可能性があるんだけど、特別優秀でも、語学力があるわけでもないので、縁のない話だと思っていたら、来た。海外転勤がやって来た。

 「向こうじゃ英語ができないと話にならないぞ」とか上司が脅しをかけてくる。弊社では、海外転勤があるということもあって、英語研修制度が充実している(こうなるまで知らなかったが)。英語の検定試験で一定のスコアを達成できると、ボーナスがもらえるらしい。たいていは、自腹で英会話スクールに通い、あとでそのボーナスをもらって相殺するらしい。

 つまり、独学で検定をクリアすれば、ボーナス丸儲けってことだ。やるじゃん、弊社。

 そういえば、昔ウイイレ(サッカーのゲーム)好きな友だちが、好きが高じて色んな人とウイイレで対戦するようになって、知らないフィリピン人と仲良くなって、毎晩ウイイレしてたら英語がペラペラになってた。これだ!

 そもそも言語っていうのは「習うより慣れろ」なのだ。誰も母語を習ったりはしない。浪人してた時、予備校の先生が「私の授業に金を払うくらいなら、海外に行った方がマシ」とよく言っていた。

 「雨傘」を「あめがさ」と読まず「あまがさ」と読むのはなぜかを説明できないように、言語は理屈じゃなくて、身体性なんだ。

 私は住んでいた安アパートを引き払い、留学生が集まるシェアハウスに引っ越した。ここで英語漬けの生活を送り、英会話スクールに通わずして英語を身につけるのだ!

 私が住むことにしたシェアハウス「バーンホフ館」には、ルーマニア人のフロリン、韓国人のミョンウォル、イタリア人のマイネッティがいた。全員英語圏じゃない…

 結局私は、四ヵ国語が入り混じった「バーンホフ語」とでも言うべき独特の言語を身につけて、海外転勤に向かうことになりました。シンプルに怖いです。