まるで根性論のバーゲンセールだな

 隣の係長は、事あるごとに根性論を振りかざすので、「根おじ」と呼ばれてめちゃくちゃ嫌われている。今どき体調不良に休んだ人に「気合いが足りない」と平気で言っちゃうような人だ。

 こういうタイプの人は苦手なんだけど、ちょっと可哀想な気もする。きっと、今までそういう言葉を投げかけられ続けてきたせいで、こんな風になってしまったんだろう。

 まぁ隣の係の話なので、大変だなぁと思いながらも他人事のように聞いていたが、状況が変わった。新しく課長になったのが、なんと「根おじ」に輪をかけて根性論を振りかざすタイプだったのだ。

 新しい課長は、電気代の節約を名目にフロアの冷房を切った。さすがに耐えかねて、みんなで抗議したが、「気合いが足りない」の一点張り。さらにはビジネスマンの基本と称して、クールビズに逆行して、ネクタイとジャケットの着用を強制した。地獄だ。

 しかし、地獄は終わらない。今度はなんと新しい部長がやってきた。新しい部長は、新しい課長よりも、さらに激しく根性論を振りかざすタイプで、もはや狂気の沙汰だった。

 新しい部長は「暑い暑い」と訴える我々に業を煮やし、フロアに水を撒き始めた。その水はどんどん溜まっていき、フロアは水槽のようになってしまった。

 「根おじ」と呼ばれていた係長も、今ではすっかり我々と同じように、新しい課長と部長の根性論に文句を言っている。しかし、新しい課長と部長の根性論は止まらない。

 水槽のようになったフロアで仕事をする我々は、他の部署から「根部」と呼ばれ、蔑まれている。我々は今日もコンブのようにフロアで漂いながら過ごしている。