一億年後の誕生日

 ヒロシくんは僕の小学校のころの同級生だ。僕は今まで彼よりもスケールの大きな人を見たことがない。
 僕が家族で箱根に旅行した時、ヒロシくんは一族総出でハワイに行っていたし、僕が「ハワイに行ってみたい」と言ったら、彼は「未来に行ってみたい」と言った。お年玉だって僕が5万円もらって喜んでるところを彼は500万円もらっていた。僕が10才の誕生日を迎えたとき、彼は一億歳の誕生日だと言っていた。
「ヒロシくんは、すごいね」
「そんなことないよ」
「だって、一億回も誕生会を開いたんでしょ?」
「ううん。一億回も誕生日をやってるとね、もう特別な感じがしなくなっちゃうんだよ。だから、千回目くらいからは、あんまり祝ってないんだ」
「そっかー。でも、お年玉だっていっぱいもらってるじゃん」
「うん。でも、毎年毎年たくさんお金をもらっても、もう欲しい物なんてないんだ」
「へぇー。うらやましい」
「僕は君のほうがうらやましいよ。誕生会を開いたり、お年玉で何を買おうか悩んだり、すごく楽しそうだ」
そういって、ヒロシくんは少し悲しそうな顔をした。100mの彼の体がすこし小さく見えた。