こらしめてやりなさい

 朝、マツシタくんが目を覚ますと、枕元に飼い猫のシャミーがいた。


「にゃー(おもしろい冗談を思いつきました)」
「おはよう、シャミ―」
「にゃー(無法者を意味するアウトローの対義語はなんでしょう?)」
「どうしたどうした。よしよし」
「にゃー(正解は水戸黄門。インローだけに)」
「よーしよしよしよし。わしゃしゃしゃー」
「にゃー(しかも無法者を懲らしめる役どころ。うまいっ!)」


 シャミーは悲しかった。自分の冗談がマツシタくんに通じなかったからだ。シャミーは悲しみをこめてリビングのソファーをガリガリした。シャミーは悲しい時だけソファーをガリガリする(後でめちゃ怒られる)。ソファーについてるガリガリの傷は、シャミーの心の傷といっても過言ではない。


 その上空78000000キロメートルの地点ではモッケロイ星人のスケサーン・カクサンが地球の様子を観察していた。宇宙船に備え付けられている全自動翻訳機がシャミーのつけたソファーの傷を捉え、モッケロイの言葉に翻訳した。それは偶然にもある種の物語のようなものだった。地球人の言語体系はモッケロイのそれとはまるで違ったため、全自動翻訳機が今まで意味のある信号をキャッチしたことはなかった。スケサーン・カクサンは大喜びで、その調査結果を母星に持ち帰った。
 スケサーン・カクサンが地球から持ち帰った物語は、モッケロイ星で大流行した。タイトルは『ミットコーモン』、由美かおるの入浴シーンがないことを除けば、地球の『水戸黄門』とほぼ同じストーリーだった。


 この『ミットコーモン』を観たモッケロイ星のコメディアンのウカーリ・ハチーブは「シシドゾヅゥーボララヒハイ(無法者を意味するアウトローの対義語はなんでしょう?)ミヒラバザナンボボバベー(正解はミットコーモン。インローだけに)ギザバビーヅダベダギ(しかも無法者を懲らしめる役どころ。うまいっ!)」というギャグを思いついた。


 ややウケだったという。