3011年の恋愛事情

平塚らいてうが「今、女性は月である」と言ったように、戦前の女性は弱い立場にいた。


しかし「戦後、強くなったのは女性とストッキングである」という言葉もあるように、女性はどんどん強くなってきた。2009年の流行語「草食系男子」は、男性が弱くなったことを象徴すると同時に、相対的に女性が強くなっていることを表していると思う。


このまま女性はどんどん強くなっていくんだろうか。「ドラゴンボール」の敵キャラのように、どんどんインフレを起こしていったらどうしよう。
天津飯→ピッコロ大魔王→ラディッツフリーザ→セル……


男性もこのままではいけないと思う。そうじゃないと女性に相手をしてもらえなくなり、最終的には人類が絶滅してしまう。
どんどん強くなっていく女性と渡り合うには、体をサイボーグ化するしかないだろう。
未来の男性は、強くなった女性と付き合うためにサイボーグ手術を受けているのがスタンダードだ。


体の99%を改造されたパーフェクトサイボーグ・タクヤとユミは、素晴らしく洗練された未来のデートをする。空飛ぶ車でドライブデート。電子頭脳にインストールされたプログラムのおかげで運転も完璧だ。バックで駐車する時のタクヤの横顔がユミは好きだ。今日はユミの誕生日で、超高層ビルの168階にあるレストランでディナーなのだ。プレゼントは彗星の圧力で作られた不思議な色の宝石の指輪。
この完璧なデートプランもすべては電子頭脳によって計算されたものなのだ。
ユミはそのことが少しだけ寂しかった。タクヤエスコートは完璧だったが、ユミの中で違和感はどんどん大きくなっていく。
帰り道、タクヤは海が見える橋に車を走らせる。完璧なBGM、完璧なシチュエーション。タクヤは愛の言葉をささやく。


その瞬間、ユミの中で何かが崩れた。
「ごめんなさい」
突然涙があふれるユミ。タクヤには何が起きたか理解できない。体調でも悪いのだろうか?と思ってX線ビジョンでメディカルチェックをする。異常なし。
「なんだか急に寂しくなっちゃって」
タクヤはユミをそっと抱きしめる。タクヤの体は鉄のように冷たい。


人類は絶滅した。