重力障害

恥ずかしい話なんですが、今朝会社に遅刻しちゃったんですよ。社会人としてあるまじき行為ですよね。いつもなら、ちゃんと始業20分前には席に着くようにしているんですが、コンビニで昼食を選んでいる時にたまたま目に入ってしまった「女峰ミルク」という名の淫靡なジャムパンを買うか買わないかで逡巡してしまい、大きく時間をロスしてしまったんです。
そんな事で20分もためらうバカがいるか!と思う人もいるかもしれませんが、その妖艶な食感に身をまかせてしまいたいと思う一方で、レジの人に自分の性生活が露見してしまうというリスクがある事も考えると、やはり10分以上悩んでしまうのも、頷ける話だと思います。パッケージの裏側に『生地の表面にある小さな穴はホイップクリームの注入口です。』と書いてあったのも、私のリビドーを刺激しました。(結局買いましたが、味は普通でした。)
それでもまだギリギリで間に合うくらいの時間でした。私のオフィスは3階にあって、エレベーターを使わずに、階段を駆け上がればなんとか間に合うはずだったんです。
エレベーターの前を通り抜けて階段へ!…行こうとしたのですが、たまたまエレベーターが1階に来ていて、走って向かってくる私を見て、エレベーターに乗るものなんだろうと気を利かせてくれた人が、私のためにドアの“開”ボタンを押して待ってくれていたのです。
エレベーターに乗ってしまったら間に合わない。しかし、階段を使ったらこの人の親切を裏切る事になってしまう。
結局、私はエレベーターに乗っていました。あの人の親切を拒絶することができなかったのです。どうせ私は美容院で「どうですか?」と聞かれても、もう少し切って下さい、と言えない人間です。憎しみよりも親切の方が怖い時もあるんです。
「親切」と書いてみて、「親を切る」だという事に気がついた冬の午後です。