ストレンジャー

今日はなんだか凄く喉が痛かった。そういう日に限ってバイトが入ってたりするものだ。トローチを舐めてバイトに行った。バイトだけで終わればよかったんだけど、こういう日に限ってトラブルが続いたりする。この前風邪をひいた時は隣りの家の猫が寝込んでいるあたしのところに小鳥を運んできた。最初は「お見舞いかな?」って喜んだんだけど、まだ生きてたんで困った。今日はそれより困った事が起きた。


バイトが終わって、すごい疲れて家に帰ったら、部屋の真ん中にびしょ濡れの女の人(卑猥な意味ではない)がいた。まったく知らない人なんだけど、とにかく濡れた女の人がいた。髪の毛もびしょびしょで服も透けるんじゃないかっていうくらい濡れてた。それで辛気臭い顔をして床に座ってた。あたしが「どちらさまですか?」と声を掛けると、鞄(これも濡れてた)からエビアンを取り出して、飲んだ。
これ以上なんのために水分が必要なんだろうか?人間の体の70%(たしか、たぶん)は水分でできてるという話を昔テレビで聞いた。もしかして、彼女は水になりたいんじゃないか?それなら声を掛けたのに返事をしなかった理由も納得できる。なぜなら水は喋らないからだ。水も人も低い所に流れるという点では同じだ。
そんな事を考えてる間に、喉が痛くなくなっていた。さっきまであんなに痛かったのに…なんで?

答えは目の前にあった。びしょ濡れの彼女が加湿器の役割をしてくれたのだ。あたしはその献身的な行為に気がついて、目頭が熱くなり、彼女を抱いて、濡れた。






(どうでもいいんですけど、最初の方で『寝込む』と『猫』で『ネコ』を掛けてるの気がつきました?)