銃の形

 ――2020年。新種のウィルスによって、人々の生活は大きく変化してしまった。と書くとSFっぽくなるけど、これは現実の話だ。(似たようなこと言っている人がたくさんいるんだろうな。)
 今まで、体温なんてものは風邪をひいたときくらいしか気にしていなかったが、いまは行く先々で検温が待っている。私が日頃から利用しているレモンサワー一杯250円の居酒屋でも、入店時に検温されるようになった。レモンサワー一杯250円のくせにナマイキな。
 しかし、あの非接触型の体温計というのは好きになれない。おでこに向かってピッとやって体温を測るあれだ。あんなものを額に突きつけられては落ち着かない。なんであんなSFに出てくる銃みたいな形をしているのか。
 もしかして、地球はすでにSF的な世界観に突入しているのかもしれない。よくよく考えれば、体温なんてのも意味がわからない。いったい私の中の何が36℃なんだろう。検温と言いつつ、人間に紛れて暮らす宇宙人をあぶり出すのが真の目的なんじゃないか。

 

ピッ。36.7℃。OK。
ピッ。36.2℃。OK。
ピッ。37.6℃。ビーッ!ビーッ!こいつは宇宙人だ!捕まえろ!

 

 私は今日も、自分が宇宙人だとバレませんようにと祈りながら銃を突きつけられる。生き延びることができれば、一杯250円のレモンサワーが飲めるのだ。