メシの量が足りないのが死ぬほど怖い

 評判がよかったので、久しぶりに映画館に行って『ボヘミアン・ラプソディ』を観にいった。はみ出し者が成功して挫折して大切なものに気づく的なお話で、ありきたりで全然面白くなかった。

 それから数日経って、話の流れからバイト先の先輩と『ボヘミアン・ラプソディ』を観にいくことになった。密かにバイト先の先輩に憧れていたので、初見を装った。先輩がどんな感想を抱くにしろ、共感を示した方がいいと思ったからだ。

 2回目に観た『ボヘミアン・ラプソディ』は最高だった。フレディ・マーキュリーの不器用さと孤独が、自分の中にスッと入ってきた。最後のライブシーンでは、思わず泣いてしまった。俺たちはチャンピオンだ!

 なんでこんなに感想が変わったのか。自分の同一性が信じられなくなってしまった。

 冷静になって考えてみると、1回目は、上映時間がギリギリでお腹が空いたまま映画を観た。これが原因じゃないか。そういえば、昔からお腹が空いていると「なんか機嫌悪い?」と聞かれることが度々あった。自分ではあんまり意識していなかったけど、空腹だと物事を楽しめなくなってしまう性質なのかもしれない。

 そのことを自覚してから、お腹が空くのが怖くなった。お腹が空いていると、人生を楽しめないような気がする。常にお腹いっぱいでいたい。

 なるべく大盛無料やおかわり自由のお店に行くようになった。ちょっとしたお菓子を持ち歩くようになった。

 努力のかいがあってか、最近は「なんか機嫌悪い?」と言われることはなくなり、代わりに「なんか丸くなった?」と言われるようになった。やったぜ!